流れるようにコマンドを打ち込んで軽やかにアバターを操るその指は、意外に節ばっていて大きい。
指自体は長いといえるんだけど、拳法を嗜んでいるからか全体的にがっしりしている。
そういえば、体格もがっしりしている。
けど、ガテン系と言うよりは見た目は細い。
なのに、触れると筋肉質で驚くというか、脱ぐと凄いというか……。
そこまで考えて健二は我に変える。
ボーっとするには不埒なことを考えていた気がする。
元はと言えば、PCに向かってる恋人がキーを打ち込む動きを見ていたせいだけれども。
複雑な動作をアバターに命令するために、ひっきりなしにコマンド入力をしているくせにその動きは淀みがない。
さすが、何年も世界チャンピオンの座をほしいままにしているキングだ。
純粋に格好良いな、と思う。
同時に、こんな凄い人物が数学しかとりえのない自分の恋人でいいのかと、色々申し訳ない気持ちにもなる。
だが、本人が健二以外考えられないというし、それに絆されてしまった上に口説き落とされてしまっては彼との お付き合いを否定する材料にはならない。
――まあ、僕自身が佳主馬君にメロメロだって言うのも一番大きい要因だけど。
本人に言ったら調子に乗って、次の日起き上がることも出来ないようなことをされてしまうので滅多に言わないけれど、健二はしっかりと年下の恋人に篭絡されているのだ。
気持ちはしっかり伝わっているだろうけど、うっかり口にしてしまえばあの淀みなくコマンドを打ち込む器用な指が途端に卑猥で悪戯な動きを始めるのだ。
OMCのキングは、ベッドでもキングです。だなんて、言えるわけがない。
健二はこっそりため息をついて、相変わらずコマンドを打ち込んでいる佳主馬の指先を眺める。
「そんな誘うような眼で見ないでよ」
ドキドキするじゃん。とこっちを見もしないのにそんなセリフを言われて健二は文字通り飛び上がる。
「そ……っ! え、えぇ!?」
思い通りの反応を返してくる健二に佳主馬は軽く笑って、最後のコマンドを打ち込む。
エキシビジョンとしてスポンサーの用意したステージをクリアして、ついでにレコード更新もしてログアウトをする。
パソコンデスクに向かっていた椅子をクルリと回転させて、健二のほうに向き直ると悪戯を思いついた子供のような顔で佳主馬が笑う。
「俺が健二さんの視線に気付かないはずないじゃない。放っておいてごめんね、用事は終ったから」
今日はずっと健二さんを構ってあげる。と言って立ち上がりソファに座っていた健二をヒョイと抱き上げる。
出会ったときは健二より小さかったのに、今では軽く持ち上げてしまうくらい育った佳主馬をちょっとだけ憎らしく思ってしまうのは男としてのプライドのせいだろう。
「ちょ、ちょっと! 佳主馬君、下ろして!」
「いやだ。折角の休みなのに、スポンサーがエキシビジョン入れたせいで、健二さん分が不足してるの」
補給完了するまで離しません。と言いながら、佳主馬は抱き上げた健二を寝室に連れ込む道すがらその器用な指で早速悪戯を仕掛ける。
「ん、ぁあ……。もう、放っておいたのは、どっちだよ」
拗ねてみせる健二に、佳主馬は蕩けそう微笑を浮かべる。
「だから、その分構ってあげるって」
そんな嬉しそうな顔されると、許さないわけには行かないじゃないか。と健二は思いながら、了承の合図の変わりに佳主馬の首に腕を回す。
明日は家のことを全部押し付けてやろう、と思いながら。
どの範囲までがアダルトとかに分類されるのか分かりませんが…
これくらいは問題ないかなと思って、こっちに移します。
ガッツリとそれ系の描写が入る文章はアップする場所考えないとなあ、と思いつつ拍手の内容がアレになるのは仕様だと思います…(汗